2016/04/06

「内包的な自分」と「存在層アジェンダ(自分アジェンダ®)」、しばらくはこれを突き詰めていきたい

自分、自分、自分の得が第一、だれかが不幸でも見て見ぬふり・・・

そうではない「内包的な自分」、自分が大事に思っている人たち、周囲、自分のまわりにある存在、それらを内包する自分、そういう自分から出発する自分の世界。


日本支援対話研究第3号掲載 研究レポート

<抜粋>

問題意識
現代社会を見てみると、貧困、格差、自殺、詐欺、偽装、ブラック企業、金融危機、テロなど、人生に暗い感情をもたらす現象が毎日のように起こっている。そして経済を第一に追求した結果といわれる温暖化や異常気象、「なにかがおかしい」とだれもが感じている。「なにかがおかしい」世の中は、だれかが何かしなくてはならない。変化を起こすにはリーダーシップが必要である。
リーダーシップ研究の多くは組織経営を扱う経営学のなかで発展してきた。リーダーシップは組織成果という現実の問題に直結しているので、自己(自組織)の利益を求める経済的人間観が中心になってきた(山本, 2001b)。経済的人間観に基づくリーダーシップは、成功か失敗か、成果か損失か、強者か弱者か、Win-Win かWin-Lose か、などの二者択一の枠組みでとらえられることになる。過去数十年発展してきたこのようなリーダーシップの枠組みでは、だれもがおかしいと感じている現状を変えられないでいる。
現代に生きていて疑問に感じることはいろいろあるが、すぐに思いつくのは次のようなことである。 

 「自分さえよければいい」
振込詐欺は、これだけ騒がれているのになぜ毎年過去最悪といわれるように、増え続
けているのか? 食品偽装も騒がれ、最近ではブラック企業もよく聞く。「自分さえ得すれ
ばいい」、「自分さえよければいい」が横行している。 

 「居場所がない」
不登校、ひきこもり、家庭内暴力、職場うつなどとあわせて、「自分の居場所がない」と
いう表現を聞くことが多い。物理的に居場所がないのではなく、自分はその場に受け入
れられているという心理的な居場所を感じられないという意味である。うつや自殺が多い
といわれて久しい。生きている場所に居場所を感じられないと、確かに生きていることに
意味を感じないかもしれない。  

 「病気も疲労もできない」
生きていくにはなにをするにもコストがかかる。疲れてしまったり病気になったら、休業
したり入院したりして、そのコストは大きくなる。現状の生活を維持するには、まさに「病気も疲労もできない」。
現代社会には強者と弱者がいる。最近では、女性や子供の貧困という経済的格差が問題
になっている。もし強者が「自分さえよければいい」行動をとり続けていたら、もし弱者や犠牲者が「居場所がない」と感じるだけなら、その強弱の格差は広がる一方である。
リーダーシップが語られるとき、多くの場合、「あの経営者にはリーダーシップがある」や「あの政治家にはリーダーシップがない」などのような批判や賞賛である。あるいは、週刊誌で騒がれたり書店やインターネットで上位に上る著名人が書いたハウツー本や成功ストーリーである。どれも他人事であり、自分事として語られることが少ない。自分事として語らないということは、つまり表面的であり思考停止である。 

リーダーシップは、自分が活動している限り、「自分事」である。他人事ではない。疑問、不安、問題を感じたら、「わたしなら○○する」と考え行動する。自分自身と取り巻く社会や環境をよく見、よく考え、真剣に取り組む。 

本稿では、経済的人間観に基づくリーダーシップの枠組み、大物を賞賛したり批判する評
論的なリーダーシップに対して、アントレプレナーシップ研究やネットワーク組織を中心とする組織論に基づいて再構築を試みる。まずリーダーシップを自分事ととらえる。自分が行動し、その恩恵も報いも自分が受ける。そして、その「自分」について、本当の意味での「自己の利益」とはなにかを探る。自己とは自分ひとりだけのことなのか、無人の孤島でもひとりだけ経済的恩恵があれば幸せなのか、このような視点から、自分事のリーダーシップと、そのリーダーシップが影響を与える自分が属する組織について、リーダーシップの枠組みの再構築を試みる。 

目次
 欲求と動機づけリーダーシップの機能
 「自分の価値」に引き寄せられる「自分のネットワーク」
 「自分のプラットフォーム」の構築
 「内包的な自分」がめざす「存在層アジェンダ」、リーダーシップの枠組み
 まとめと提言